より安全なホルモン補充療法をめざして
欧米では閉経前後の女性にホルモン補充療法(HRT)が行われています。
HRTの先進諸国の普及率は、 オーストラリア56%、カナダ42%、フランス38%、アイスランド38%、スウエーデン29%、アメリカ38%と非常に高いです。このように欧米女性の半数近くがHRTを行っていますが、、日本はわずか1.7%と極めて低いです。
当院ではHRTを更年期女性のよりよい環境つくりのために積極的に行っています。
より安全な方法という根拠は具体的には以下の3つが挙げられます。
- 飲み薬や貼る薬ではなく、ジェル型で身体に塗ってエストロゲン(女性ホルモン)を吸収するタイプが既に登場しています。
- 低用量のエストロゲン量で充分に作用があり、長期間の使用が可能になっていること。
- HRTを行うにあたって乳腺エコーによる乳がんの有無、経膣式エコーによる子宮体がんの有無が早期にまた簡単にわかることで、HRTの副作用と言われていることを逆に長所に変えれることです。
更年期障害の原因
更年期障害は エストロゲンの減少、 また自律神経の乱れを起こすため、色々な症状が起こります。
更年期の症状
- 疲れやすい
- ホットフラッシュ
- 憂鬱
- 肩こり、腰痛、手足の痛み
- 気力減退
- 睡眠障害(寝つきが悪い、眠りが浅い)
- 顔面紅潮、のぼせ
- かんしゃく、イライラ
- 頭痛、めまい
- 息切れ、動悸
- 腰や手足の冷え
- 口の渇き
- 記憶障害
- 食欲減退、吐き気、嘔吐
- 便秘、下痢
- 頻尿、排尿障害、残尿感
- 性交障害、膣の乾燥感
このような症状がでたら
ホルモン補充療法(HRT)で対応し、更年期障害自体の症状を取り除くことができます。
早い方では4日~5日位でこれらの症状の軽減が見られます。
更年期障害以後の病気
更年期障害以後の病気はあくまでエストロゲンの急激な減少によるわけですから、 エストロゲン補充療法で予防ができます。
- 膣炎
- 尿失禁
- 皮膚萎縮
- 高脂血症
- 動脈硬化からくる心筋梗塞や脳梗塞
- 骨粗しょう症
- アルツハイマーからくる痴呆症
特に5の変化は食事の問題も含めてですが、特に重要と思います。 このような女性の急激な身体の変化は男性とは全く異なるものであり、女性に特有なものと いえます。
ホルモン補充療法を始める時期
HRTは若返りの薬ではありません。今のレベルを出来るだけ維持するための方法です。まずは血液検査や血圧測定を行い、結果がわかれば早い方がいいのは当然です。元来女性は女性ホルモンによって女性は守られていますので。 50歳代でのHRTは動脈硬化を抑制し、冠動脈疾患の予防効果があります。 60歳以上で始めたら動脈硬化の抑制作用はあまり効果があがりません。
ホルモン補充療法を始めるにあたって必要な検査
- 血液検査
・ 来院された日にされた方がいいと思います。
・ LH, FSH, E2,(女性ホルモン) テストステロン
・ 肝機能の中での脂質系 LDL(悪玉コレステロール)RLPコレステロール TG(中性脂肪) - 子宮がん検査
- 乳がん検査
・ どちらの検査もできるだけ早め(3ヶ月以内)にされることをおすすめします。
45歳~50歳以後は 経皮吸収型のル・エストロジェル、ディビゲル、エストラーナ等の薬をそれぞれの症状に合わせて処方します。特にル・エストロジェルは身体に塗るタイプのジェルですので使いやすいです。